映画レビュー『今日も嫌がらせ弁当』@八丈島
2020.01.15 vol.29
※親に対して恨みや憎しみ等の感情を持ってる方にとっては不快な文章かもしれません。
「親子のコミュニケーションとは、『道路標識も信号もない茶沢通り』である。」
Byニーチェ
授業参観で母親に蹴りを入れる。
母親にイラついて部屋の窓を割る。
母親の電話を大学4年間無視し続ける。
誰でも通る息子と母親の戦いだ。誰でも通るわけではない?
少なくとも私は常に母親と戦いながら大人になった。
私は母親が嫌いだった。
毎日酒を飲んではだる絡みをするところ。
部活や授業参観でしゃしゃろうとするところ。
勝手な夢を子供に押し付けるところ。
親が離婚騒動になった時は、寡黙で穏やかな父親についていこうと幼いながらに考えていた。
中学を卒業するまでで私の反抗にある程度観念した母親は、高校の部活にも授業参観にも学校行事にもあまり顔を出さなくなった。
大学へ進学して社会人が3年目になろうとした今、全てをやり直したいとは思わないし母親に従えば良かったとも思っていない。
「親」と広辞苑で調べると、『成長期の子供から疎まれる存在』と載っている。(掃除機調べ)
成人式の二次会を覗くと、
「親父とは何度も喧嘩したけど、今では親父の気持ちも分かるよ。」
「自炊を始めてお母さんの偉大さが身に染みるね。」
と台本があるかのように親への感謝を述べるシーンが見られる。
正直、私はまだそのような感謝を心の底から述べられる程出来た人間ではない。
成人式のスピーチでは祖母への愛情を語って涙したが、母親については全く触れていない。
今でも母親からの電話は大体無視する。
ただそれでも、母親の愛情は本物でかけがえのないものだったのだと、痛切に感じる。
目を合わせて「ありがとう」と伝えられる大人に、なろう。
そんな親と子供の戦争を描いたのがこの映画である。
おすすめ映画④
『今日も嫌がらせ弁当』
★★★★☆
泣ける度★★★★★
笑える度★★★★☆
ハートフル度★★★★★
◯あらすじ
八丈島で二人の娘を育てるシングルマザーのかおり。女手一つで二人の娘を育てるために働き詰めの毎日を送っていたが、次女の双葉はそんなかおりと口を聞かなくなった。
高校に入ってもいまだに口を聞かない双葉。かおりはクールな双葉が嫌がるように、毎日キャラ弁を作るようになる。
失恋や就職活動を通して少しずつかおりに心を開き始める双葉だが、卒業が差し迫ったある日、かおりが倒れてしまう。
最終登校日、かおりが入院中の病院を抜け出して作った特大サイズの弁当が双葉に届く。
最後の弁当に込められた母親のメッセージとは。
◯感想
母親は偉大である。
娘の反抗に対して余裕を感じさせる行動、言動。
そんな余裕がかえって腹立たしい娘の気持ちも、分かる。
それでもかおりが倒れてしまって、母親も無理をしていたのだと知った双葉。
不器用ながらも母親への愛情を少しずつ表現していく様子が懐かしく感じました。
最後の弁当に込められたメッセージには、入院中でも母親はこんなに偉大なのかとなみだなみだ。
予想外の急展開も驚かされる伏線回収もない、母親の愛情が真っ直ぐ感じられる映画でした。
◯余談
太鼓で世界を目指すという、島民には謎すぎる設定には笑いました。
それと、島の大きさは山手線に近いのですね。
今度から説明する時に使います。
それと奇しくも私の母親も名前がかおりなので、無駄に入り込んでしまいました。